一人ひとりに、燈(ともしび)を
豊かな街や住まいには、
生き生きとした人びとの表情が、灯っている
そんな風景を、私たちらしく、つくっていきたい
それが「TAIMATSU」という名に込めた想いです
ある時は、足元を照らし、
行く先を指し示す、道しるべとして
ある時は、場をあたため、
仲間と知恵の集まる拠りどころとして、
ささやかな燈を、一人ひとりの心の中に、灯していく
そんな想いとともに、
今日も誰かの街や住まい、暮らしをつくっています
“TAIMATSU” - Light a torch for everyone.
The Japanese word “TAIMATSU” means “torch” in English.
We enjoy meeting people living in good towns and homes. Their smiles are like torches that gives us energy.
Our company “TAIMATSU” is named by our wish to make people happy and take part in creating wonderful towns and homes.
At one moment, a torch lights up our path and tells us, where to go.
At another moment, a torch warms up our home, bringing together friends and facilitates the exchange of wisdom.
Our passion is to light a torch in the heart of people.
Every day we are working with the passion to “light a torch” for someone, somewhere.
<経歴>
松尾 宗則
一級建築士
早稲田大学商学部卒業(市場学・現代社会科学)
早稲田大学芸術学校卒業(建築都市設計科)
2007-2010:鈴木恂+AMS(住宅・別荘)
2011-2012:SUDA設計室(幼稚園・保育園)
2013 :SUPERPIXEL 設立
2018- :TAIMATSU 設立
2019.05- :株式会社 TAIMATSU 設立
管理建築士
京都芸術大学非常勤講師
・
松尾 遥
一級建築士
文化女子大学造形学部卒業
早稲田大学芸術学校卒業(建築都市設計科)
2009-2016:MTA/高橋真建築設計事務所(住宅・別荘・施設)
2017 :FAR/鈴木遥建築設計事務所 設立
2018- :TAIMATSU 設立
2019.05- :株式会社 TAIMATSU 設立
管理建築士
京都芸術大学非常勤講師
松尾宗則・ 松尾遥の建築

stair house 階段が見える家
建築家:松尾宗則・ 松尾遥
塔状の3階建て2世帯住宅。
階段動線を正面にだけ配置することで、窓と居室を大きく、明るい家になりました。
三鷹と吉祥寺の間、住宅街に建つ2世帯住宅のです。
家の前の道は、商店街の名残を感じられる、人通りも車も通る少し賑やかな道。
祖父母の代から住んだ土地に新たな家を建て替える計画の依頼がありました。
間口は2間(けん)が目一杯の敷地幅。隣家も肩をくっつけるように建っています。
高さを目一杯確保し、3階建てに。また、2世帯の動線としての階段を前面に持ってくることで、室内における無駄な場所を減らしています。
階段はそのまま屋上へ伸び、屋上への塔屋がファサードとして表れ、4階建てのように見えるプロポーションにデザインしました。
細長い敷地形状のため、家の奥まで光が届くように、階段のファサードとなった南側の窓は、出来るだけ大きく確保し、
どの階でも光と風が抜けるよう配慮しています。
一階の玄関には、前を登下校する子供達に人気の飼い犬のためのスペースも。
かつての家のように、玄関を介してすぐに道路へ繋がるご両親のスペース。玄関から2階へと階段が伸びていきます。
階段を介して、街の風景が光と共に家の奥まで届きます。
屋上は3方は開けた開放的な見晴らし。街の夜景に階段のシルエットが浮かびます。
所在地 :東京都三鷹市
設計監理:TAIMATSU
構造設計:株式会社 エヌ・シー・エヌ
施工 :株式会社 印南建設
主要用途 :一戸建住宅(二世帯住宅)
構造規模 :木造SE構法 地上3階建
敷地面積 :45.58㎡
建築面積 :33.03㎡
延床面積 :91.04㎡
用途地域 :近隣商業地域(80%, 200%)
防火地域 :準防火地域
設計期間 :2018.07~ 2019.04
工事期間 :2019.05~2020.03

cube house ひとつの家具が生み出すワンルームリノベ
建築家:松尾宗則・ 松尾遥
【家具ひとつで生活を間仕切る】(リノベーション案件)
多摩側の近く、河川敷ののびやかな雰囲気が包み込む住宅街に位置するマンション一室の改修計画です。 南に面するために小割りされていた二部屋もこれから住まうひとのライフスタイルに合わせて間仕切りをなくしました。 まとまった水回りをそのままに、壁をなくし、ワンルームへと変化させます。広めのワンルームに壁ではなく、 ゆるやかに生活の仕切りを与えるために、真ん中にキューブ型の家具を配置しました。壁でもあり、 収納でもあるこのキューブは部屋を仕切ることなく、開放感と明るさを保ったまま、 このワンルームの中心的な役割を担っています。
Planning Point
1 窓のないダイニングキッチンの位置
2 広く使いたい、分けて使いたい
3 費用をかけずにキッチンを新しく
TAIMATSU Story
1 間仕切りをなくし、一室空間に
2 斜めに置かれたキューブが生活の場を分ける
3 既存キッチンの扉を木製に変え、趣を一転
Before
【建築概要】
所在地:東京都府中市
用途:専用住宅
家族構成:単身
構造/規模:RC造・地上7階建の4階1室
延床面積:50.97㎡
竣工年月:2014.08
施工:Melix
写真:太田拓実
建築工事費:1000万円代未満

surround house 団欒を囲う家
建築家:松尾宗則・ 松尾遥
食卓とキッチンを囲むための家。
家族の生活を囲う家は、明るさとにぎわいを囲う家になりました。
吉祥寺で40年。いつ暖簾をくぐっても賑わいの絶えない秋田料理屋を営んでこられたご両親とそのご家族は、とにかく客人をもてなすことが好きなのである。
打合せの度に用意してくださる昼食は、料理店をやられるている家族ならではの味と品数。家族6人と僕らとで一つの食卓を囲むのがいつの間にか打合せの楽しみとなっていたほどである。
ご両親と子家族の6人と犬2匹のための家である。
かつてお母さんが育った土地を受け継ぎ建て直すこととなった。
武蔵野の地。玉川上水近くの敷地周辺は畑も緑も残る住宅地。敷地の南側には家が建たない駐車場があり、冬の低い太陽もサンサンと受け止めることができる。
食卓とキッチン。団欒の形から設計が始まった。
近所に住む弟家族も集まれば10人の団欒の場所として、まず大きなテーブルを用意した。
食卓を家の中心と考え、囲うようにキッチン、リビング、水回りを配する。
ダイニングの先には外へと繋がるように、窓先にデッキで作られた中庭が続く。
にぎわいがそのまま外へとはみ出すように、中庭という外の部屋がひとつつながっているように感じさせる。
お店を閉め、家で過ごすことが多くなったご両親の寝室は、中庭の壁の先、離れのように計画した。
子家族のスペースは2階になる。キッチン、浴室は一階に共用としたため、3部屋の居室とサンルームを確保した。
家事スペースとなるサンルームは2階の南側、トップライトを有し、日差しをたっぷりと受け止める。
サンルームから寝室へは外のデッキで繋がっている。まだまだ小さな子どもたちにとっては回遊できることが楽しくてたまらない様子。
子どものための装置としては他に2階の廊下に雲梯(うんてい)を吊り下げた。
成長に合わせて高さを変えられるよう製作した雲梯は、大人にとっても楽しい仕掛けとなっている。
下階の寝室の上には同じように寝室を設け、1階のリビングと水廻りの上にも高さと形状に合わせた居室をそれぞれ設けた。
団欒を囲う家は、外から見ると小さな家々が集まっているように見える。
窓を有した小さな家を囲むように並べ、楽しい団欒を内包するようにした。
陽が沈み、あたりが暗くなれば窓から町へとその団欒が溢れていく。
主要用途:一戸建住宅(二世帯住宅)
構造規模:木造 地上2階建
敷地面積:146.61㎡
建築面積:58.37㎡
延床面積:115.08㎡
用途地域:第一種低層住居専用地域(40%,80%)
防火地域:法22条
設計期間:2019.08~2020.06
工事期間:2020.06~2021.02
所在地 :東京都武蔵野市
設計監理:TAIMATSU
共同設計:山内祥吾(山内建築アトリエ)
構造設計:犬飼基史(佐々木睦朗構造計画研究所)
施工 :株式會社 山菱工務店

through house スキップフロアの家
建築家:松尾宗則・ 松尾遥
働き盛りのためのスキップフロアの家。
動線を整理して、日常が楽しく、ラクになる家になりました。
建主は若い働き盛りの30歳。
仕事を軸とする多忙な平日と、できるだけ家で過ごす休日
というはっきりとしたライフサイクルがあり、
またその時住んでいたマンションのプランと生活動線の不一致さを語っていました。
設計序盤、いつものライフサイクルを生活行為として整理し、
生活の深度という視点で並び替える作業を建主と行ってみました。
行為としての日常を見直し、並べなおすことで、
生活行為を繋がりある一連の断片として配置しなおす。
生活行為をコマとして置き換え、4コマをずらすように重ね、10コマを繋ぐ。
段床を巡廻することで、各コマで変化のある景色を作り出していく。
中心性のある田の字ではなく、コマの連なりとしてのシークエンスを意識し、
1コマには1機能 1窓を原則して配置しました。
隣のコマの窓は次への展開への補助線となるよう配置し、
一連の段床とコマの変化を通して、
室内における移動する楽しさへと繋がるよう意識しました。
深度を持った断面は雑把に分けると3層からなります。
生活の深度を重層した住宅は
日常のシークエンスを内包する家になったように思います。
そしてそのシークエンスに寄り添うひとつ一つの開口部が、
外部にもたらす建築の表情として表れ、街と呼応する住宅になりました。
主要用途 :一戸建住宅
構造規模 :木造 一部RC造 地下1階 地上2階建
敷地面積 :100.05㎡
建築面積 :47.95㎡
延床面積 :107.78㎡ (テラス含めて119.37㎡)
用途地域 :近隣商業地域、第一種低層住居専用地域(50%,116%)
防火地域 :準防火地域
設計期間 :2018.08~2019.03
工事期間 :2019.04~2019.09
所在地 :東京都三鷹市
設計監理 :TAIMATSU
共同設計 :溝部礼士(溝部礼士建築設計事務所)
構造設計 :辰巳雄一(studio83 一級建築士事務所)
施工 :株式會社 山菱工務店

notch house テラスを取り込んだ家
建築家:松尾宗則・ 松尾遥
いずみ中央は湘南台より東に位置するベッドタウン的なニュータウンが広がる街です。和泉川が流れる谷に位置する駅周辺には親水広場があり、夏には水辺で遊ぶ子供たちで賑わっています。街路樹の木陰に沿って川辺を下ると、雑木林が立ち並ぶ小高い丘の途中に敷地があります。かつては養蚕が盛んだったというこの地域の家々は大きな敷地を有した農家的な家と、ニュータウン的な新しい家々が織り混ざっています。敷地は南側隣地との高低差があるおかげで南風が抜け、2階の高さからは富士をはじめとする山々を望むことができます。
日々の暮らしの中で、テラスを部屋の一部のように行き来できるようにしたいという思いから、家族が集う2階の大きなリビングに、三角形のテラスが大胆に割り込む計画 となっています。この割り込み(NOTCH)により、リビング、テラスダイニング、ダイニングを回遊できる広がりを感じられるようになりました。
2階ではリビングの一部として、1階では子供部屋の延長として、この半外部の空間が庭や景色の繋がりとなってくれます。玄関は、縁側のような長いベンチから入ります。子供たちの遊び場にもなる前庭との関係から構えすぎない玄関を計画しました。1階の天井高さを抑え、手の届きそうな2階との一体感を得ることで、玄関から家全体の一室感を感じられます。1階の天井に素地の波板板金を用いることで、光が内部で乱反射し窮屈にを感じさせないよう配慮しています。
【建築概要】
所在地:神奈川県横浜市
用途:専用住宅
家族構成:夫婦+子供二人
構造/規模:木造在来工法・地上2階建
敷地面積:137.57㎡
建築面積:59.63㎡
延床面積:100.62㎡
竣工年月:2018.08
構造設計:辰巳 雄一 (studio83)
施工:大同工業(株)・金澤板金
建築工事費:2000万円代
設計協力:溝部礼士建築設計事務所

fragment house 周囲と関係のいい家
建築家:松尾宗則・ 松尾遥
PLANNING POINT
- 道路と隣地とのいい関係
- 庭の活かし方、使い方
- 住まい手が把握しやすい家
TAIMATSU STORY
- 隣の庭を借景にしたリビング、道路と一体化させたパーキング…
- 3つに分けた庭 リビングヤード、ストックヤード、グリーンヤード
- 設計プロセスへの積極的参加、家がまるごと一室空間
「あした、土地を決めたい」
翌日に控えた登山の荷造りをしている晩のこと、 いつも山登りを共にしている友人からの電話が鳴った。 「明日の劔岳、土地探しになってもいい?」
子どもの保育園を機に実家の近くに住みたく、そのためには春までに引っ越したい。 土地を探して、家を建てたいのだが間に合うだろうか。 すでに夏の終わり、時間はなさそうだが進めてみようと二つ返事で引き受けたのが初めての自分の仕事だった。 翌早朝、楽しみにしていた劔岳への気持ちもザックに背負いつつ、友人が目星をつけていた土地を回り、 なかでも相性の良さそうな土地にすぐ決められ、そのまま山へと向かった。 「子どもが走り回れる家がいいな」 山へ向かう車中も、険しい登山の道中も、お互いのはじめての家づくりへの想いを伝え合うことで 疲れも感じられないほどに興奮していたように思う。小屋に着いた後も、北アルプスの月夜の中、静寂と山々に囲まれながら、 どこまでも楽しい家づくりへの想像が続く。 かくして、親友との家づくりは始まったのでした。
育休は家づくりの好機?
設計のプロセスとして特徴的なことが二つ。
ひとつは完成までの時間に余裕はなかったこと。
当時まだ設計事務所に勤めていたこともあり、 学生時代を共にした設計者ふたりに声をかけ共同設計で進めるとこととなった。
そして、もうひとつは施主である友人が育休中であったために、積極的に設計のプロセスに参加したことである。
設計者たちにとっても最初の住宅設計、鼻息荒くも意気込んで設計議論を重ねていたが、 時に施主も自主的にSkypeで参加し、明け方まで打合せをしていた日々を思い出す。 住み始めた後も自ら手が入れられるような家にしたいという考えの施主からすると、 設計の過程や家の素材や作り方を細かに把握できたことは、とても楽しんでいたようだった。 自分の家をもつという限られた機会に、家を買うのではなく、建てるという選択は 対価を払って物を買うことに慣れている現代人にとってはなかなか勇気のいることかもしれない。 ただ、友人でもあるご主人の家づくりへの向き合い方を見ながら、その過程を経て建てられた家への思いは、 家を買っただけのそれとは歴然とした相違があると感じた。 住まいへの思いや、家族の構成、予算はそれぞれ違う。 しかし、家づくりというプロセスに向き合うこと、そして費やす時間は間違いなく完成した住まいにも、 住み始めた後の住まい方にもよい形となって現れてくると思う。 「生活が前向きになった」 完成から1年ほど経った後、何気ない会話の中での友人の言葉にたまらない喜びを感じた。
【建築概要】
所在地:東京都府中市
用途:専用住宅
家族構成:夫婦+子供一人
構造/規模:木造在来工法・地上2階建
敷地面積:133.61㎡
建築面積:53.24㎡
延床面積:106.48㎡
竣工年月:2013.06
施工:桃山建設
写真:太田拓実
掲載:新建築住宅特集2015年5月号 ・ 日本経済新聞2015年9月9日
建築工事費:2000万円代
設計協力:溝部礼士建築設計事務所・畠中建築設計スタジオ

slash house キッチンから生まれるリノベーション
建築家:松尾宗則・ 松尾遥
突然連絡があったのは、母校でアシスタントをしていた時の学生からでした。 しばらく仕事に就いた後に設計を学びたいと入学してくる学生が多い学校で 在学中も仕事と両立しながら頑張っていた彼女は、卒業後、結婚を経ながらもこれまでの仕事を継続。 それでも、設計への想いと学びを活かしたく、自分の新居の設計をしたいと駆け込んできました。 「自分で設計もしたいけど、実務は分からないので、何とかご一緒に!」という相談も彼女らしくて驚いたのですが、 さらに驚いたのは出産間近のお腹を抱えてやってきたこと。 「でも、まだマンションも決まっていないので、一緒に探してもらえませんか?!」 こうしてリノベーションへ向けて、マンション探しからはじまりました。
流れるようにつながるすまい
晴れて希望のエリアで購入できた築約50年の中古マンションは、それぞれの居室や水まわりが個別に分けられ、 住まいの営みの連続性は感じられない間取りでした。 来客を招いて食事を楽しむことが好きな夫婦にとって、人が集うキッチンとダイニング、そしてリビングはひとつの 大きな空間に集合させること。シンプルながらその集合の仕方を見つけ出すのに、設計上多くの時間を費やしました。 答えになったのは、キッチンカウンターと下り天井に表れた、目線を誘なう斜めのボリューム。 下階にある玄関から階段を上がりきり最初に部屋に訪れた時、キッチンスペースからダイニング、そしてリビングへと、 この斜めのラインを頼りに自然と目線が流れ、室内に連続性をもたらしています。 ラフな計画案を私たちと一緒になって考え、それが実際に工事により進むという醍醐味を味わった彼女は、 プロセスを辿る毎にどんどん新しい住まいに夢中になり、いつの間にか私たちを引っ張る存在となっていったのでした。
Planning Point
1 お腹を抱えてマンション探し
2 限られたスペースを広く見せたい、使いたい
3 お施主さんも一緒に設計したい!
TAIMATSU Story
1 リノベを見据えてご一緒に物件探し
2 斜めを手がかりに、製作キッチン、製作家具で広げる連続性
3 一緒に提案、一緒に作図、一緒に模型制作!
Before
【建築概要】
所在地:東京都目黒区
用途:専用住宅
家族構成:夫婦+子供一人
構造/規模:RC造・地上8階建の3階1室
延床面積:69.36㎡
竣工年月:2017.06
施工:アプリア
建築工事費:1000万円代

KPM house 楽器と暮らすリノベーション
建築家:松尾宗則・ 松尾遥
楽器と賑わいと暮らす
演奏家、作詞作曲家であるお施主さんは南米やアフリカを飛び回るワールドミュージック系楽団の座長さん。初めて訪れた改修前の家はすでに楽器で溢れかえっていた。古くからの住宅街にある旧家は家族が代々住み継いだ時を感じさせる年代物の住まい。これからの家族の住まいとして、また仕事場として快適にしたいというご要望のもと計画が始まった。いろいろな国や文化で過ごしてきたからだろうか、家の随所随所に対しての考え方が大らかだなぁと打合せの度に気がつかされる。
「1階は土足使いでいい。全面が土間みたいな感じで、玄関はなくて、どこの窓からもそのまま入って来やすいように」
「洗面所には洗面器はいらないね。手や顔は他で洗えるし」
要望や話を聞く度に、こちらも想像して楽しくなるような言葉が返ってくる。
そんな中、このリノベーションの要となったのが、楽器置き場と仕事場でもあるスタジオの存在である。パーカッショングループも主催するため、20台を超える太鼓の置き場が求められ、その出し入れは頻繁。かつては2階に積むように置かれていた太鼓を使うたびに階段で降ろす作業は考えるだけで苦労が分かる。また、家での演奏やレコーディングも行うためそれなりの防音仕様も求められた。
太鼓置き場には水回りのスペースが適していた。太鼓の背丈に合わせてもその下に浴室、トイレとして必要十分な高さを確保できる。南米の街中で見るような、鮮やかなイエローボックスの上に太鼓が楽しく並ぶことになった。2階のスタジオ、既存窓をそのまま防音仕様とするために、ヨット金物を使った上げ下げ式の防音戸を設置。重厚感はあるが頼もしい機構ができた。
お仕事柄、国内外のいろんな方が集い、語らい、唄い、泊まっていく家。
「いやぁ何度も言うけど、本当に毎日が快適だよ」
訪ねる度に口にしてくれる言葉と、振舞われる楽しい料理が何よりのねぎらい。その人らしい住まいかた、その人らしい家。住まい手とつくる家づくりは、その都度出来上がる住まいに個性が生まれて楽しい。とりわけリノベーションは、前提条件が多い。既存の家、これまでの暮らし方や使って来た家具、広がる新しい住まいへの夢、それぞれに限られた予算。各々の条件を拱みながらも現状の問題を解決し、家族の新しい場を生み出すリノベーションは住居の外科手術のようなものかもしれない。
Planning Point
1 20台以上の太鼓置き場
2 防音性能を確保した簡易スタジオ
3 みんなが気軽に入って来やすいダイニング
TAIMATSU Story
1 水回りをボックスとし、その上に太鼓スペースを確保
2 既存サッシを変えることなく、上げ下げ式の防音戸を設置
3 2つの入口、土間使いの床、キッチン続きの賑やかダイニング
【建築概要】
所在地:東京都板橋区
用途:専用住宅
家族構成:夫婦+子供一人
構造/規模:木造在来工法・地上2階建
延床面積:76.49㎡
竣工年月:2017.05
施工:きよたけ建築工房
建築工事費:1000万円代未満

spread house 窓辺の景色からのリノベーション
建築家:松尾宗則・ 松尾遥
スクリーンルームという可能性
増築
【建築概要】
所在地:群馬県嬬恋村
用途:週末住宅
構造/規模:木造在来工法・地上2階建
竣工年月:2017.05
施工:信濃営繕

one house 引き継いだ平屋の家
建築家:松尾宗則・ 松尾遥
かつての家の記憶を引継いで
敷地は低層の住宅地帯にあり、遠くを望めば狭山丘陵が連なる景色を一望できる穏やかな環境である。 ご主人の両親と共に暮らした古くからの住居を離れ、夫婦と3人の子供で新しい土地での家づくりがはじまった。
420㎡のゆとりある土地面積のおかげで、はじめから平屋で十分に計画を進めることが出来た。 かつて2世帯で暮らしていた住まいは、玄関・勝手口・縁側を介して外部と繋がりを持ち、それぞれの場所へとふさわしく訪れる人との頻繁な交流があったことが印象的だった。
改まった来客は玄関、近所の人は縁側に集まってしばしおしゃべり、日々の生活の動線は主に勝手口…
それぞれに応じて多様な内と外の関係が織りなす、風通しの良い豊かな生活を、新たな家族の生活にも馴染ませていきたいと考えた。
T字型に構成された平屋は、全面道路側を切妻屋根の家族が集まる場所とし、敷地の奥には片流れ屋根のそれぞれの個室が 連なるよう計画した。屋根形状による天井高さを活かし、個室を横断するようにロフトを設けることで3人の子供の部屋を緩やかに繋げる仕組みを提案した。
また全ての部屋には必ず掃出しの開口部を設け、その位置や敷地形状に応じて外部との関係が多様になるよう計画した。 リビングには縁側のように腰掛けられる大きな開口、主寝室には洗濯物が干せるサービスバルコニーと繋がる開口。子供部屋 それぞれからは軒下の土間に繋がる開口があり、靴や植木鉢もそれぞれの部屋に近接して置けるようにした。
生活に豊かさを生む内外の関係は、それと同時にどの部屋からも出入りが出来ることを可能にする。 それは家族それぞれの生活動線を縛ることなく自由に振る舞えることに繋がり、そんな一人ひとりにとっても拠り所として受け容れる場所であることが、 かつての住まいと共通する魅力なのではないだろうかと考える。 玄関・勝手口・縁側という形式的な繋がりを、個々の生活に寄り添うような内と外との関係に置き換えることで、これまでの 暮らしの中の懐かしい記憶と共に、新たな日々も連続して描いていってくれることを願っている。
【建築概要】
所在地:東京都東村山市
用途:専用住宅
家族構成:夫婦+子供三人
構造/規模:木造在来構法 地上1階+ロフト階
敷地面積:420.13㎡
建築面積:156.11㎡
延床面積:167.03㎡
竣工年月:2015.06
施工:(株)増田コーポレーション
写真:金子滋

SUMIRE STUDIO
建築家:松尾宗則・ 松尾遥
日暮里繊維街のメインストリートの並びに
新たなスタジオが始まろうとしています。
写真スタジオと出会いの場を作りました。
これから少し時間をかけて、
この場所でたくさんの人と出会い、
出会った人たちと決めて行くことにしました。
次の出会いの場に、ぜひいらしてください。
【建築概要】
所在地:東京都荒川区
用途:スタジオ
構造/規模:RC造・地上7階建の6・7階
延床面積:128㎡ + 101㎡
竣工年月:2019.06
施工:広橋工務店

箱根の提灯
建築家:松尾宗則・ 松尾遥
あかりの仕掛け
インテリア
かつての宿場町、箱根にある旅館のラウンジへの提案です。坂倉建築研究所によるこの旅館は、“離れ”を演出した造りになっており、食事の時は、個室群から母屋にあるレストランへロビーラウンジを通って移動します。箱根の伝統工芸・寄木細工の作品が多く飾られているこのロビーに、宿泊者を楽しませるような仕掛けをして欲しいというのが今回の依頼でした。
そこで起用したのが小田原提灯です。畳んだ時に胴の部分が蓋に収まるように作られている提灯はスリムで独特のフォルムをしています。この提灯を大きな竹格子に並べ、上下させる仕組みを作りました。夕食時、宿泊者が食事へ向かうロビーには箱根の森が窓の先に広がっていますが、食事を済ませ、日が暮れたロビーを通る時、さっきまで森が広がっていた窓の前にずらりと楽しげな提灯が並びます。日常から離れた時間だからこそ、ちょっとした変化で来る人を楽しませたい。宿としてのそんな気持ちがひとつの仕掛けになりました。
【建築概要】
所在地:神奈川県箱根町
用途:ホテル インテリア
竣工年月:2017.06
施工:鈴木造園

小伝馬町のオフィス
建築家:松尾宗則・ 松尾遥
これからのオフィスフロア
リノベーション
神田と隅田川の間のエリア。かつては衣料品の問屋街として賑わったというこの地域も表通り側がすっかりオフィス街としての表情をしている。敷地は一本入った通りにある。向かいには90年前に小学校として建てられた昭和モダンな建物が佇み、落ち着いた雰囲気のある街角が残る。7階にあるこの一室からはそんな街の様子が眼下に広がって見える。
Before
【建築概要】
所在地:東京都中央区
用途:オフィスビル
構造/規模:RC造・地上9階建の7階
延床面積:108.43㎡
竣工年月:2017.07
施工:アプリア

鶯谷町のギャラリー
建築家:松尾宗則・ 松尾遥
内と外を光でをつなぐ
リノベーション
渋谷駅から線路沿いを南下。かつての渋谷川周辺の地形の起伏を感じさせる道沿いに経つのビルの改修計画です。4層のビルの最上階にあるこの一室からは南側に広がる家々による谷を見渡すことができます。住宅とは違い、完成後に使う人が特定できないテナントビルの一室において、既存の構造体のもつ大らかさと外部からの光を活かすよう計画しました。ビル全体の計画後に増築されたと思われる最上階はコンクリートブロックの壁に木造の屋根が積まれたもの。かつての低い天井を取り外し、屋根架構を露にした内部は浮遊した照明とともに奥行きをもった印象になるよう計画。上げられていた床面は躯体まで撤去し、新たな地面としての土間を打設。真鍮によってグリッドに区切られた土間は水面のように反射し、仕上げられた天井を照らします。あるものを活かすためのニュートラルな改修。
PLANNING POINT
1 渋谷 4層テナントビル最上階
2 既存の柱、勾配屋根、架構
3 背の低い窓
TAIMATSU STORY
1 渋谷という土地柄にあったニュートラルなオフィスへ
2 構造体を現し、天井高さと広がりを確保
3 水面のように反射する床が光を取り込む
【建築概要】
所在地:東京都渋谷区鶯谷町
用途:ギャラリー
構造/規模:RC造・地上4階建の4階1室
延床面積:51.48㎡
竣工年月:2014.10
施工:Melix

神宮前のアトリエ
建築家:松尾宗則・ 松尾遥
働く場所を自らつくる
リノベーション
自分たちで仕事をはじめる時、まず最初に仕事場であるアトリエをつくることから始めました。はじめて自分たちの仕事として選んだ場所は原宿・神宮前。街がいつでも賑やかで、多様な職種、自由な働き方を受け止められる街の雰囲気が好きでエリアを限定して物件探し。かつての渋谷川のほとりに見つけた一室は、原宿の賑わいにも、渋谷に続く街並みにも身を置くことができる見晴らしのいいロケーション。昔は住居だったという一室をちょっとした配慮を加えてシンプルに仕上げました。天井を抜く。梁は壁と同色に塗る。照明は梁にだけ付ける。設計という少しの気遣いだけで、仕事場としての無駄のない一室になりました。
Before
【建築概要】
所在地:東京都渋谷区
用途:オフィス・アトリエ
構造/規模:RC造・地上6階建の5階1室
延床面積:38.85㎡
竣工年月:2014.09

千ヶ滝の週末住宅
建築家:松尾宗則・ 松尾遥
夏の家、これからの住まいへ
避暑地として賑わう町の喧騒から少し離れ、古くからの別荘地に佇む旧家。幼い頃から夏になると通っていたかつての夏の家。老朽化に加え、夏向きに作られていた家は通年使用には向かないとても年季の入ったものでした。お勤めも一区切りされ、都心での生活から、少しずつ郊外暮らしにシフトしていくきっかけも合間って、これからの夫婦の住まいとして新たな小屋を建てることになりました。
読書家であるご夫婦の大量の書籍を保管するために大きな本棚でリビングを囲います。音響機器の収納も兼ね、寝室との境壁にもなっている両面本棚はお施主さんが模型まで作られて考案された、思いが詰まった家具になりました。
素材は抑えつつ、広さと寒さへの機能性を優先した新たな小屋でのこれからの生活。家具や本を運ぶ度に楽しそうなご連絡をいただくことで、僕らもとても楽しい気持ちになれるのです。日常の環境を整えること、これまでを思い切って一新すること、その決断がこれからを前向きに変えていくと感じられる家になりました。
【建築概要】
所在地:長野県軽井沢町
用途:週末住宅
構造/規模:木造在来工法・地上1階建
敷地面積:484.23㎡
建築面積:93.16㎡
延床面積:93.16㎡
竣工年月:2018.03
施工:信濃営繕
建築工事費:1000万円代